写真館の写真-オンナ編


また断られた。
理由は、「写真のイメージと違った。」
もう何度目だろう。
そんなこと、言われなくても分かっていますとも。

49歳の時に元ダンナを若い女に寝取られて離婚した。
息子は既に成人していたので、もう一度“女”として生き直そうと婚活を始めた。
“女”であるために、簡単が何よりとショートヘアだった髪を伸ばした。
白髪染めを怠らず、ゆるいウエーブをつけることも忘れないでいる。
歯のホワイトニングもした。
体型を調えたくて、自宅に居る時は下っ腹にSIXPADを貼り付けてプルプルしまくっている。
二の腕用も買った。
職場では、「離婚してから綺麗になった。」と言われているのよ、これでも。
でも、デジカメで撮った写真をプロフィールに載せている時はお見合いにならなかった。
だから写真館に行った。

プロのメイクさんと、プロのヘアアーティストさんに身を委ねた。
プロのカメラマンが言葉巧みに誘導してくれ、モデル気分で撮影してもらえた。

出来上がった写真の中の私は幸せそうに笑っていた。
嬉しかった。
これが私、これが今の私。こんなふうに私は笑える。
嬉しくて嬉しくて、カメラマンの、「少し修正しました。」にも抵抗感はなかった。
だって、顎のラインが少しシャープになって、鼻筋が少し通って
眼が少しクリッとしただけだもの。

写真を差し替えた途端、お見合いが増えた。
写真に負けない私になる努力をしようと思った。
写真を超える笑顔を忘れず、大人の女として恥ずかしくない振る舞いを心掛け
男性を立てる会話を心がけた。
それなのに、
お見合い回数は増えたけれど、それより先に進めない。
「写真と違う。」と断られる。

鏡に向かって考える。
鏡の中の私と写真の私、確かに違うわ。
でもね、分かって欲しいの。

挨拶した途端に大きなため息をついたAさん
お見合いの間中、眼をそらし続けたBさん
20分で帰って行ったCさん
私が隣にいるのに、「相手が来ていません。」と相談所に電話していたDさん
スナップ写真でもお見合いしてくれた?
会いもしてくれなかったでしょ、違う?

私は土俵に上がりたいの、見合という土俵に上がりたいのよ。
写真はその為の道具だと思っている。
私、間違ってる???
私は土俵に上がる為に、これからも写真館の写真を使い続けるわ。
婚活しているなら、写真が実物の5割増しであることくらい覚悟してよね。
別人写真の何が悪いの?
私は土俵に上がりたいだけなのよ!!