― 母と息子の、幸せで切ないお話し ―


「母親を捨てるのか!好きにすればいい!!」
交際80日目にして、母親の激情が炸裂した。
二人のご縁を見極める“交際期間”は90日。
成婚退会か破局か、ギリギリの時期に出た母親の叫びである。

A男の母親は女手一つでA男と姉を育てた。
姉は結婚し家を出たが、A男は母親との二人暮らしを続け、そして50歳になった。

名のある大学を出て安定企業に勤めるA男は高収入。
身長が高く、ルックスも良い。
モテない訳がないのに未だ独身なのは、母親の想いを振り切れないA男と、
A男を手放しきれない母の想い、その二つに因るものだ。

A男の婚活歴は長い。女性からの申込みは多く、交際にも進む。
自分を選んでくれたと、お相手女性を大切にするA男だから交際は順調に進む。
成婚退会目前まで進んだこともあるが・・・ご縁が結ばれたことは無い。
母親の反対を押し切ってまで、結婚へ進むことはこれまで一度もなかった。

それでもA男が婚活を続けるのは、子供を持ちたいと願っているからである。
母親に内孫を抱かせたいという想いも当然、ある。

そしてA男は30代のB子とお見合いをし、交際に進んだ。
客観的に見て、B子にはもっと年齢の近い、
所謂“相応しい”男性とのご縁の可能性が十分にある。
ひと回りも年上のA男でなくても、というのが率直な感想になるであろう。
でもB子はA男を選んだ。
A男の状況を知っても尚、B子は逃げなかった。

二人の気持ちは調い、成婚退会に向けて幸せな時が流れるはずだった。
それなのにA男が立ち止まってしまった。
母親の了解と得てからご成婚したいと。

そして母が叫んだ、「母親を捨てるのか!」と。

A男とB子には交際専任アドバイザーが寄り添っている。
それまでも報告を受け、相談に与り、二人の想いが成就するように見守ってきたが、
そのレベルではないと、双方個別に面談を改めて持つこととなった。

B子の想いは変わっていない。
A男との面談が山場であり、ここでおふたりの将来が決まる。

交際専任アドバイザーはプロとして知っている。
50歳の男性が子供を持てる可能性は、この先またあるとは言い難い。
いや、A男にとってはこれがラストチャンスと知るべきだ。
A男にもB子にも幸せになってもらいたい。

自分でも気づかないうちに、交際専任アドバイザーは仕事としてではなく、
一人の人としておふたりを応援したいと念じるようになっていた。

交際専任アドバイザーがA男に語った。
子供の幸せを願わない親はいません。
その母親が発する言葉は愛情そのものなんです。
私はあなたを愛しているという想いが、すべての言葉の裏に隠されています。
どれほどキツイ言葉を投げかけられても「私はあなたを愛している」と聞いてください。
そして、その言葉を「ありがとう」と受け止めてください。
育ててくれて有難う、愛してくれて本当に有難う、その想いでお母様の言葉を聞いてください。
「母親を捨てるのか」それは、「母を捨ててでもB子さんと一緒になる覚悟があるのか」と
あなたに問うているのですよ。
だから応えてください、「僕は大丈夫だ」と。
「幸せになるよ!心配してくれて有難う!」と。

子供が幸せであることが何よりの親孝行になります。
それが現実のものにできる状況が今整っているんです。
お母様への感謝を今こそお伝えしてください。

しっかり言葉にしてお母様にお伝えされたことはございますか? 
今までのすべてへの感謝をお母様にお伝えすることが、
お母様からあなたのご結婚への了解を得る足掛かりになるのです。

男性は母親に手紙を書いた。
50年間の想いを綴った言葉は、母親の心を優しく慰め喜びに変わると信じている。

お二人は近々ご成婚のお手続きにいらっしゃる運びとなった。
交際専任アドバイザーは嬉し涙にくれることだろう。
この仕事をしていて良かったと思える幸せをいただく瞬間でもある。