運命のスクランブル交差点

結婚相談所に登録してから、3年を経過している男性。
高学歴、大手企業勤務、ルックスも悪くない、と3拍子そろった男性で、
プロフィールを送れば、ほとんどの女性からOKのお返事がもらえる。
もう数え切れないぐらいお見合いしている。

…が、しかし
最初のお見合いでお断り、もしくは2回目でお断りされてしまうパターンが続いている。
なぜかというと、彼は「貝になる男」 すなわち、口下手で女性とうまく喋れないのだ。
決してお人柄は悪くないのだが、言葉がうまく出てこない、おとなしい、
会話が途切れてしまう…。しーん。その沈黙に女性が耐えられないのだ。
条件が良すぎて女性が期待してしまうだけに、その落差もあるのかも知れない。
男性もさすがに自信をなくしてきて、もう結婚を諦めようかと思っていた矢先のこと、
奇跡のような出会いがめぐってきた。

とある日のお見合い当日。
お見合いする女性が早めにご来店され、スタッフに質問があった。
「あの~、今日の男性の方って、もしかすると○○高校出身じゃないですか?
実は同じ高校で、あこがれの先輩だったんです」との言葉! 
「そうなんですか?えー!1学年上の先輩になるんですね?」と聞くと
「そうです。陸上部の先輩で走るのがすごく速くて、県大会でもベスト4に入るぐらいで、
有名だったんですよ。私は吹奏楽部で、ちょうど音楽室から彼が練習する姿が見えて…
声をかけられるような存在じゃなくて、なんの接点もなかったけど…
とにかく、あこがれていました」と。
なんとまあ、偶然の出会い。確かに学生時代、陸上部だった話は聞いていたが、
そんなに足が速いスター選手だったとは…
でも、彼が貝になる男と知ったら、また振られてしまうんじゃないか…
そんな心配をよそに、この二人は出会って3ヶ月後には、一気にゴールインまで駆け抜けた。
ヤッター、敗者復活戦からの勝利、ごぼう抜きのスプリンター!
彼女も控えめでオクテなタイプだったから、彼のシャイな部分も含め、波長があったようだ。
「学生時代の憧れの先輩と結婚できるなんて、夢見たい!」と、
心から運命の出会いを喜んでいた。

女性は入会したばかり。男性は足掛け3年、もう諦めて退会しようと
思っていた矢先の出会いだった。
ほんの少し彼女の入会が遅かったら・・・
ほんの少し彼の退会が早かったら…
すれ違っていたであろう運命。

結婚相談所にいると、こういう神がかり的なことが、たまに起こる。
だから、この仕事はやめられない。
結婚相談所には、小さな神様が住んでいらっしゃるのかも知れない。
あるいは会員様それぞれのご先祖様が、本人同士を引き合わせているのではないだろうかと
思う瞬間がある。目に見えない存在にそっと手を合わせたくなる瞬間がある。
 
それは渋谷のスクランブル交差点の雑踏の中、偶然、知り合いに出会うように。
どれが赤い糸か解らないグチャグチャの毛糸がからまった中、すっと糸がほどけるように。
時々、鳥肌が立つような、偶然と偶然が重なりゴールインすることがある。
「あれ?神様っているのかな?」 そんな風に思うこともあるけど、
それは、まやかしのものではない。自らが信じるところに光があり、眼力が岩をも通すように、
目に見えない引き寄せの力が働くのだと思う。
人と人とが錯綜するスクランブル交差点…あれ?と思って振り返った瞬間…
そんな瞬間がここにある。

「運命の人生交差点」
私はこの職場を、勝手にそう呼んでいる。